東京高等裁判所 昭和34年(く)107号 決定 1960年1月26日
少年 K
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由は、抗告申立代理人弁護士坂本泰良同野田宗典共同作成の抗告申立書記載のとおりであつて、その要旨は少年は傷害事件の容疑により東京家庭裁判所の審判に附せられ、昭和三四年七月一日同裁判所において保護処分として藤沢市内の天嶽院(院長竹内とみを)に補導を委託されたのであるが、右天嶽院は少年の指導よろしきを得なかつたと思料されるのに家庭裁判所調査官は一種の先入観を以て調査し天嶽院の補導の欠陥等につき十分なる調査をなさず、少年を中等少年院に送致する旨の決定をした原決定は不当であるからこれが取消を求めるというにある。
よつて少年Kに対する少年保護事件記録及び少年調査記録を調査すると、右少年は本件非行以前たる昭和三二年一二月強姦致傷事件により東京家庭裁判所の審判を受け、在宅試験観察の結果昭和三三年七月二〇日不処分の決定を受けたにも拘らず、更に本件非行を行い、そのため昭和三四年七月一日試験観察のため右少年を家庭裁判所調査官の観察に付し、その補導を竹内とみをに委託されたところ、その間の成績は良好ならず右補導者において厳禁している喫煙、暴行等の反則を犯しているのであつて、反省の気持薄く本件非行は単なる偶発的のものとは認められない。そして家庭裁判所調査官が所論のように先入観を以て調査したとは認められないし、また少年の健全なる育成を期するにはこの際相当期間適正な矯正教育を施す必要があると思料されるから、少年を中等少年院に送致する旨の原決定は相当であつて本件抗告は理由がない。
よつて少年法第三十三条第一項により主文のとおり決定する。
(裁判長判事 岩田誠 判事 渡辺辰吉 判事 司波実)